新築マンション購入と同様に独身女性が中古マンションをリノベーションするケースが増えています。人気の理由は何でしょうか?メリットとデメリットから女性のリノベーションについてご紹介します。
独身女性が中古マンションを購入するケースが増えています。理由の一つとして考えられるのは、未婚率の増加です。内閣府が発表したデータによると、25~29歳の未婚率は1985年は30.6%でしたが、30年後の2015年にはほぼ倍の61.3%に増えています。
30~34歳では10.4%から34.6%、35~39歳では6.6%から23.9%と、どの年代でも未婚率は大きく増加しています。
また内閣府男女共同参画局が平成25年に発表した男女共同参画白書によると、50歳になった時点で一度も結婚をしたことがない人の割合を表す生涯未婚率も、平成22年の段階で10.6%と初めて2桁になるなど、年齢を重ねても結婚を選択しない女性が増えています。
一昔前は、マンションに関わらず住宅購入といえば「結婚してから行うもの」といったイメージがありました。しかし、現在では、独身であっても住宅購入を決意することはもはや珍しいことではなくなっているのです。
独身女性であっても住宅を購入することが珍しいことではなくなったのは、社会的に女性が自立し、結婚という人生を選ばずとも、充実した日々を送れることが大きいでしょう。
そして、自分のためにマンションを購入する独身女性が増えるなか、新築マンションではなく中古マンションを選ぶ人も増えています。それには大きく2つの理由があり、そのうちの1つは予算上の問題です。
平成30年に国税庁が発表した「民間給与実態統計調査」によると、平成29年時点で女性の平均給与は287万円(平均年齢46.2歳、平均勤続年数10.1年)です。職業や勤務地にもよりますが、この年収で、特に都心やその近郊で「新築マンションを購入する」というのは難しいため、中古マンションを選択する人が増えているのです。
独身女性がマンションを購入する際に重視するポイントとして、駅までの距離が遠いと夜遅くの帰宅などに不安があるため、駅から近いところを希望する人が大半です。また通勤時間を考えれば郊外ではなく、できるだけ都心に近い場所を選ぶ傾向があります。
「駅近、都心へのアクセス良好」といった立地以外にも、オートロック、モニター付きインターフォン、宅配ボックス、豊富な収納、最新の住宅設備といった条件をそろえている新築マンションの価格は、決して低くありません。
多くの女性が望む立地、条件にマッチしたマンションを購入したくても、一般的な独身女性の平均賃金では「予算的に厳しい」というのが、中古マンションを選択する大きな理由となっています。
また人気のエリアはすでにマンションが開発されていて、新しいマンションが企画されない場合もあります。通勤に便利、今の住まいから近く土地勘があるなど、住みたい街があって、そこでマンションを探すにあたり、新築にこだわらず中古マンションを選ぶといった声もあります。
上記にお伝えしてきたように、予算をはじめ、立地などの面から自分の希望する物件がない場合、新築ではなく中古マンションを選択する独身女性は少なくありません。
中古マンションの購入にあたり「自分好みの間取りとデザインに仕上げて、おしゃれに、そして快適に暮らしたい」という夢を叶えるためにリノベーションを選ぶ人も増えています。
以前であれば、リノベーション費用はマンションの購入とは別に現金で支払う、もしくは別途金利の高いローンを組む必要がありました。最近では、すでにリノベーション済みの物件が増えたことに加え、中古マンションとリノベーションのローンを一本化できるようになっています。さらにリノベーションには次のようなメリットがあります。
リノベーションのメリットの中でも大きいのが、自分好みの間取り、デザインに変更できることです。トイレやバス、キッチンといった水廻りを大幅に移動するなど、建物の構造自体に関わるようなレイアウトにすることは難しいですが、壁に面しているキッチンを対面型にしたり、バスルームをタイル調にしたり、バスタブをエレガントな猫足タイプに変更したり、といったことはほぼ可能です。
和室とDKをつなげてLDKにする、押し入れをウォークインクローゼットにする、床を無垢のフローリングにする、壁紙をデザイン性の高い輸入壁紙に張り替えるなど、間取りや内装に手を加えることができます。
リノベーションにおいては、新築マンションよりもオリジナリティーあふれるデザインにできるのが魅力で、近年は人気を集めています。
都心に住むのか、郊外に住むのかによっても変わってきますが、中古マンションであれば新築よりも手が届きやすい価格であることがほとんどなので、多くのマンションを視野に入れ検討することができます。
そして「駅に近く、南向きで高層階、近くにスーパーやコンビニ、病院があるマンションに住みたい」といった条件を挙げた場合も、中古マンションであれば見つかる可能性が高くなります。
新築はおおよそ実物が完成する前にモデルルームを見て、間取りや仕様などを確認します。中古マンションはすでに建っているので、近隣の建物との距離感、部屋の広さ、日当たり、風通しなどを自分で体感することができます。南向きにこだわっていたとしても、「ほぼ西向きだけど目の前に大きな公園があり視界が抜けるし、風が入るので気持ちがいい」、また築10年以内が希望だったけれど「建物がきちんと管理され、室内もきれい。前の住人が水廻りはリフォームしているのでそのままでも問題ない」もなど、自分の五感を使って物件を確認することもできます。
「南向き以外も立地が良ければ見てみよう」「築年数を20年まで伸ばしてみよう」など、感覚的に物件を見て回る楽しさも加わり、新築よりも選択肢の幅は広がると言えるでしょう。
中古マンションは新築と比べ安く購入できること、物件とリノベーションのローンを一本化できるようになったことなど、資金面においていくつかのメリットがあります。そして中古マンションの資金面のメリットは、これだけではありません。
戸建て、マンションにかかわらず一般的な新築物件の多くは15~20年が過ぎると市場価格が大きく下落するケースもあります。そのため、売却する時期によっては、最初に購入した金額よりは低い価格で査定されることになります。
東京23区内のマンションでも、築年数が10年を超えてくるあたりですこし価格が下がり、20年を超えるとさらに下がる物件もなかにはあります。中古マンションはそういった価格の変動を経ているので、そのようなマンションであれば市場価格の大きな下落という心配を抱えることはなくなります。
人気のあるエリア、また開発が予定されているエリア、新駅や新しい路線が乗り入れるエリアでは、物件の価値が下がらず、中古マンションでも市場価値を維持したり、資産価値が上がったりする可能性もあります。
ここまでリノベーションのメリットをご紹介してきました。しかし、リノベーションには少なからずデメリットも存在します。
リノベーションのメリットでも触れましたが、リノベーションは建て替えではないため、マンションの構造自体を変えることはできません。
マンションの構造は、主に築年数の古いマンションで採用されている壁式構造、近年多くのマンションで採用されているラーメン構造の大きく2つに分けられます。
ラーメン構造は柱で支える構造のため、枠組みを残したまま壁を取り壊すことができます。そのためリビングとそれに続く部屋の壁を取り壊して、広いリビングをつくることも可能です。しかし壁式構造は壁で支える構造のため、場所によっては壊せない壁があります。そのため、ラーメン構造のように好きな場所の壁を壊して1つの部屋にしたいといった工事ができない場合もあります。
ほかにもマンションは戸建てと違い集合住宅で、多くの人が住んでいます。そのため騒音問題を考慮して床材の変更を禁止している場合もあります。そのため、構造も含め事前にリノベーションの要件をしっかり確認しておく必要があります。
価格を重視して選ぶなら、築年数20年以上の中古マンションが対象になってきます。こういった年数を経た物件は、経年による劣化は避けられません。マンションの法定耐用年数が47年と設定されていることからも、築年数が20年、30年に及ぶ場合は建物の寿命が短い印象があり、耐久性について不安を感じることがデメリットと言えるでしょう。
また、耐震性などにおいては建築基準法も関係してきます。建築基準法は、改正が行われるたびにその基準も厳しくなっています。特に1981年6月1日に実施された新耐震基準は、1978年に起きた宮城県沖地震を受けて大幅に改正されています。
1981年以前のマンションは旧耐震基準に沿って建築されていることから、大地震への備えについて不安が残るのは否めません。しかし、そういったマンションも、当時は高級マンションで建築費をかけて造られ、強度が高いものもあります。
物件としては価格が低めで、リノベーションにこだわってコストをかけることができるのもこういったマンションです。古くても耐震改修や補修をきちんと施し、状態の良いマンションもあるので、修繕履歴などを確認するようにしましょう。
築年数が古いマンションはリノベーション工事を始めてから、欠陥が見つかり追加工事が発生することも珍しくありません。
給排水管の劣化が進み、補修や交換が必要で、予算がかさんでしまうケースがあります。ほかに、壁紙を新しくしようとはがしたところ、壁の内側にカビが発生していてメンテナンスが必要になることもあります。
また欠陥がなかった場合でも、工事を進めていく中で希望が変わる、もしくは追加したくなるといったこともあり得ます。例えば「コンセントの位置を変えて数も増やしたい」「壁紙だけ張り替えようと思っていたけどアンバランスなので床も変更したい」「キッチンを入れ替えるなら、リビングのドアもテイストを合わせたい」といったことが挙げられます。
工事の変更、追加が重なればそれだけ工期も伸びてしまうため、購入してから実際に住むまでに時間がかかります。そうなれば、現状の住まいの家賃を支払う期間も長引き出費がかさみます。
リノベーションにおいては、見えない部分の劣化、プラン変更などから、最初に想定していた予算を超えることは少なくありません。物件探しの時点から、リノベーションのプランニングをしてくれる専門家と内見をして、想定される補修の規模などについてアドバイスを受けるのもおススメです。
リノベーションを行ったマンションに住み続けるのであれば、問題はありません。しかし結婚や両親の介護など、さまざまな事情により転居することになり売却をしなければならなくなった場合、一般的なマンションに比べ売却がスムーズに進まない場合があります。
特に、自分の好みにこだわり過ぎて個性的な内装にすると、敬遠される可能性が高くなります。仮に買い手が見つかったとしても、リノベーションにかけた費用をマンション価格に上乗せすることは難しくなります。その場合、リノベーション費用を売却額で回収できず、持ち出しになってしまうこともあります。
ここまで中古マンションが選ばれている理由や、リノベーションのメリット・デメリットについてお話ししてきました。「中古マンションについて調べていると、『リノベが人気』といった言葉を目にするけれど、リノベーションとリフォームは何が違うの?」といった疑問を持った人もいるでしょう。
この2つの言葉は、法律的に明確な区別があるわけではありませんが、住まいづくりにおいてそれぞれに意味合いを持たせ、使い分けられることが多くなっています。それぞれの違いについてご説明します。
リノベーションは、既存の住まいに工事を施すことで新築のときよりもより良い性能を持たせ、住まいの価値を高めることです。間取りの利便性、内装のデザイン性、住宅設備の機能性を向上させるために、壁を取り除いたり、床を替えたり、大規模な工事を行うことがほとんどです。
リフォームのもっとも大きな目的は、経年劣化により老朽化してしまった住まいを新築の状態に戻すことです。賃貸のアパートやマンションを退去する際に、賃貸契約を結んだ時の状態に戻して返すことを原状回復といいますが、リフォームとは一般的に、この原状回復と同じ意味で使われていることが多いようです。
リノベーションは、既存の住まいを工事によって新築時以上の状態にし、価値を向上させることが目的。これに対し、リフォームは既存の住まいを工事によって、新築時の状態に戻すことが目的。それぞれの違いは曖昧ではあるものの、もっとも大きな違いは「工事を行う目的」と言えるでしょう。
目的が違えば、工事の規模も異なってきます。リフォームは原状回復の色合いが強いため、壁紙の張り替え、システムキッチンやバスタブ、トイレ便器の交換といった小規模工事が中心です。これに対しリノベーションは、壁の取り壊し、水道管、排水管の交換、間取りの変更といった大規模な工事を行います。
リノベーションとリフォームは、「工事をすることで達成する目的と、目的を達成するために施す工事の規模によって使い分けられている」と考えてよいでしょう。
リノベーションとリフォームが持つ意味の違いを知ることで、中古マンションを購入するにあたり、自分は何を求めているのか、また予算的にどういった改修を施すのかよいのか、具体的にイメージできるようになったのではないでしょうか。
最後に、下記のようなことも頭に入れてマンションを選ぶ際のポイントにしてみてください。
半身浴が好きで、お風呂でゆっくり過ごしたいので広いバスタブにしたい。飼い猫と楽しく暮らすため壁にキャットウォークをつくりたい。カフェめぐりが趣味なので、LDKをカフェ風の内装にしたい。読書好きなので大きな書棚を配置した読書コーナーをつくりたい。
上記はほんの一部で、住まいに対する夢は人によりさまざまで、自分の思い描く暮らしを柔軟に叶えてくれるのがリノベーションの魅力です。デザインや用いる素材にこだわりがあるのであればリノベーションがおススメで、一から作り上げていく楽しさが醍醐味です。
リノベーションを行うためには、建築士などの専門家と打ち合わせを重ね、内装やデザイン、設備について自分の希望をきちんと伝え、工事の内容を決めていく作業が欠かせません。
こういった作業は物件を決めた時点で始まります。理由は、リノベーションの費用を住宅ローンに組み込む場合、リノベーションに必要な費用の大枠を算出し、物件価格を含めた借入総額でローンの事前審査を行うからです。
ローンの総額を減らすことは難しいことではありませんが、後からローンの借入額を広げるのは難しいため、リノベーション費用については多めに見積もってもらいます。事前審査で借入できる金額などが決定し本審査を通過・住宅ローンの契約が済むと、リノベーション費用の内訳について細かく決めていくことになります。 水廻りや内装など、どこにどんなリノベーションを施すのか、専門家と打ち合わせを重ね工事のプランを立てていきます。
自分の思い描くプランを具体的に提示するためにも、ネットや雑誌などで気に入ったデザインや設備があれば、それをファイルなどにまとめて業者に見せるのがおススメです。打ち合わせなどは数回に及びますが、業者任せにせず、一緒に作り上げていくまめさは求められます。
独身女性がマンションを購入するにあたり、重要なことはなんでしょう。
それは、自分がどのくらいの金額のマンションを購入できるのかを知ること、その予算でどのエリアのどんな立地の、どのような条件のマンションを選べるかを把握することが大切です。
新築では難しいエリアや立地であっても、中古マンションであれば手が届く場合もあります。マンション購入にあたって自分が優先することは何かを整理して、マンションを選びましょう。
リノベーションの費用は住宅ローンに組み込むことができる場合が多いので、より自由な発想で自分らしい住まいを手に入れるのであれば中古マンションはおススメです。専門家とも相談のうえ、ぜひ希望のマンション購入を実現しましょう!