Chapter0 prologue

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★ プロローグ★

図今も昔も、ドラマに出てくるようなお洒落なマンションからは、なぜだか知らないが、決まって 東京タワーが見える。以前、内館牧子さん脚本の「昔の男」の中で、藤原紀香 が住んでいたマンション、がそれである。
宝石店の一店員が、東京タワーの見える、豪華な マンションに住めるはずがない、という意見が、藤田弓子、石倉三郎の両親から、紀香のような娘が産まれるわけがない、という意見と共に新聞に掲載されていたが、まったくをもって、その通りである。「とんびが鷹を生む」ことはあっても、ただの店員が、あんな立派なマンションに住めるわけがない。なんせ、東京タワーがあんなに大きく見え、おまけに内廊下ときているのだから。
内廊下のマンションは、それだけで高級と相場が決まっているし、しかもあの広さだ。50uはあるとみた。あんな立派なマンションを借りようものなら、家賃が月30万を下ることはないだろう。30前の若さで、そんな家賃が払えるわけがない!
なにも私が力説することもないが、紀香は、宝石店の一店員にすぎないのである。宝石商の娘ではないのだ。だが、しかし・・・宝石商の娘でなくとも、東京タワーの見える立派なマンションに住むことは可能なのである。
普通に考えると、どうあがいても不可能としか思われないことを可能にしたのが、この「わたくし」なのである。
私がいかにして、紀香顔負けの豪華?なマンションを手に入れたか、それをご披露いたしたい。(夜な夜な、東京タワーを見ながら、パソコンに向かおうと思ったわけである)


図その前に、手に入れたマンションが、どんな物件であるかを、少々記しておく。
内廊下ではない点が、ちょっと紀香物件に負けているとは思うものの、立地条件 &眺望からいったら絶対に勝っている、と思うのである。その理由を述べよ、といわれたら、、、

  1. 立地条件・・・代官山及び恵比寿ガーデンプレイスまでなんと、徒歩15分(最寄り駅までは10分)。・・・(昔の私は、こんなところに住むのは、芸能人ばかりなり、だと思っていた)
  2. 眺望・・・最上階、14階の我が家のリビングからは富士山が臨め、廊下側の部屋からは、恵比寿ガーデンプレイスの向こう、東の夜空に浮かび上がる東京タワー。絶景である。加えて、北の方向には、新宿のお洒落なホテル、パークハイアットが見える。
こんな私の部屋≪2LDK(61u)≫を借りるとしたら、周辺の家賃相場からして、月30万といったところだろうか。


前置きが長くなってしまったが、なぜ一介のOLである私が、こんなところに住むことができるのか。
それは、部屋を借りるという発想ではなく、買おうと思ったからなのである。なぜ買おうと思ったのか。とにかくほしかったから。それに尽きる。だが、これではなんのことやら、になってしまうので、もう少し分かりやすく言うと、まず家賃が勿体ないと思っていた。家賃はただ捨てているもの。私にはそう思えた。100年払ったって、絶対に自分のものにはならない。私の感覚でいえば、お金を捨てているのと一緒。おまけに高い家賃を払っていたら大した貯金もできやしない。
「働けど働けど猶(なお)わが生活楽にならざり。ぢっと手をみる」
あ〜あ、と過去にはしばしば手のひらを眺めたものである。
どうせお金がないのなら、一国一城のあるじになって、優雅に暮らした方がマシではないか。不況でマンション価格と金利が安いのも私にとっては追い風となった。


図もし不況になっていなければ、マンションを手に入れることは無理だったであろう。いくらマンションがほしくても、私に手が届く金額には限りがある。それに、金利も高い。逆に考えれば、私の生活に潤いをもたらせてくれた。それまで、ばかみたいに高かった洋服はお手ごろ価格となり、外での食事にしても、割安なお店が増えた。バブル期にも大して給料が増えることがなかった私は、崩壊後も下がることはなかった。そこで、子供の頃から不動産ちらしを見ることが大好きで、漠然と自分のマンションがほしい、と思っていた私は、行動を起こしたのであった。
もし、賃貸に甘んじていたとしたら、収入が上がったとしても、都内では、せいぜい2DKがいいところ、東京タワーを臨むことはできなかったろう。
今の私は、家に帰るのが楽しい。14階でエレベーターを降りると、まず東京タワーの夜景が目に入り、我が家だな、と思う。
そして、部屋に入ると、まず、カーテンを開けるのが日課である。普通、夜はカーテンを閉めるものだが、私はオープンにする。もちろん、すばらしい夜景を見るためである。
「みんな〜、きいてちょーだい!私は、こーーーんなに素敵なお部屋にすんでるんだよ〜ん!!!」
ほんとは声を大にして言いたいところであるが、賢い私は間違ってもそんなことはしない。ごくごく親しい人にしか「マンションを買った」などとは言わないのである。
なぜなら、「パトロンがいるんじゃないか」とよからぬ噂を立てられては、とてもこまる。(笑)なんせ、まだお嫁入り前であるからして。
そして重大な理由の2つめは、「ねたまれる」のがめんどくさいからである。妬まれるのと、羨ましがられるのとでは、同じようなリアクションがあったとしても、天と地ほどの差があるのである。逆風は受けないに限る・・・。

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