Chapter4 仮住まい編-その1 仮住まい開始!

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5月連休が終わると、そろそろ仮住まいするところを探さなければならなかった。
「あー、やだ。また金かかる」
探すのも面倒だが、がっぽりお金が要りようになるのも気が重かった。部屋を借りる場合、家賃の6ヶ月分を用意することが常識とされている。敷金2ヶ月、礼金2ヶ月、仲介手数料1ヶ月、そして前家賃。それに引越し代だのなんだのと、100万からのお金が出て行く算段だ。100万ためるのがどんなに大変か、わざわざ書くまでもないことである。敷金は半分くらい戻ってくるかも知れないが、礼金など、どぶに捨てるようなものである。
私の場合、1年に満たない仮住まいと決まっていようとも、ある程度の広さがないと荷物が収まらない。なんせ、55uのところに住んでいたのだ。30uの1DKに戻ることはできない。最低でも40uは必要だ。だが、広くなればそれなりに家賃も高くなるし、そうなるとどぶに直行するお金だって必然的に増える。
新しく買ったマンションの頭金だって、まだ足りない状態である。なんせ今後の貯金を当てこんで決めた頭金の額だ。とにかく無駄な出費は極力抑えたい。礼金なしのマンション狙いでいければそれに越したことはないが、礼金なしというのは、そうそうはない。礼金なしというと、ぼろぼろで借り手のつかないマンションを想像されるかも知れないが、その他にも礼金なしの物件はある。公庫から融資を受けて建てたものは、礼金をとってはいけないという規則になっているのである。(普通は更新するごとにとられる更新料も、とってはいけない)
公庫融資物件狙いでいきたいなあ、とは思ったものの、そんな物件がほとんどないことは、初めからわかっていた。詳しくは知らないが、公庫から融資を受けるためには、それ相応の基準をクリアしていなければならず、銀行から融資を受けるのが一般的のようである。(銀行融資物件が、基準に満たない、不良物件だということではない)
ところが、ひょっこりと現れたのである、公庫融資物件が。図面を見ると、43uあって南を向いているし、3階建ての3階で、なかなかよさそうである。早速見に行った。
一目見て「よし、ここだ」とまでは思わなかったが、築5年で新しいし、リフォームもされて、きれいだし悪くなさそうなので、その場で決めてしまった。1階に大家さんが住んでいるというのが、なんだか面倒だな、という思いはあったものの…。
いまどき生活に干渉してくる大家さんはいないだろうが、会ったら挨拶しないわけにもいかないだろうし、菓子折りでもぶらさげて、一応入居のごあいさつにも行かないわけにはいかない。
引越しは大変だった。荷造りも大変だったが、部屋が広いので、あまり邪魔にならないところにダンボールを積み上げて置く、ということができた。だが、その荷物を運び込んだ部屋は、今までより狭くなってしまったのである。60箱のダンボールがうず高く積み上げられた和室を見てぼーぜんとなった。どっちみち1年経たないうちに引っ越すのだから、なるべくダンポールから荷物を出さないようにしようという私の思惑は、見事にはずれた。ダンボールのまま置いておくスペースなんて全くない。特に、本の場合、本棚は本棚でスペースを取り、本を入れたダンボールはダンボールでスペースを取る。どうせ読みもしない本をまた本棚に並べ、10ヶ月後にまたダンボールに積めて出す、という、全く生産性のない作業を繰り返したのであった。
今までは衣替えも必要なく、春夏秋冬すべての洋服をクローゼットに並べていた私だが、今度ある収納は、1間半分の押し入れだけ。それと自分で持っている洋服箪笥があるのみ。運び込まれた洋服の山を見て、今後どうしてよいのか、気が遠くなりそう、ではなく実際、なった。結局、つっぱり棒を駆使して、なんとかイメルダの体面を保つことができたものの、つっぱり棒を設置するのも、並大抵ではない。髪振り乱し、汗だくになってやっとつっぱれた。こうしてどうにか私の仮住まいが始まった。

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